論文:Waiting Lines as a Marketing Issue
TwitterのTLで見かけて興味を持ったので読んでみました.
Waiting Lines as a Marketing Issue
Michel Kostecki
European Management Journal Vol. 14, No. 3, pp. 295-303, 1996
www.sciencedirect.com
色々なサービスの待ち時間について論じたものです.
待ち時間の性質の分類や,様々な待ち時間対策の事例紹介は興味深かったのですが,正直言って論文というよりエッセイのような感じです.エビデンスの示されていない記述が非常に多いのが気になりました.
以下備忘録です.
- 顧客の待ち時間マネジメントはその他のマーケティングMIXと同等に重要,かつ低コストで効果のある施策が打てる状況にも関わらず十分に検討されていない。
- 待ち時間が発生することは人気の証拠であったり,それ自体が上質な体験の一部となり得るが,それをあてにするのはリスキー。
- 顧客を待たせるコストは待ち時間のコストと不快に感じるコストの和。
- 待つことによる不満足の要因は以下のようなものがある.
- 我慢できる時間
- 予測される待ち時間
- 知覚される待ち時間
- 我慢できる時間は下記に拠る
- 時間の価値(忙しいほど高い)
- サービスの価値(高い非日常なサービスでは待てる)
- ニーズの強さ(無いと死んじゃうような場合は待てる)
- 類似サービスへのアクセスしやすさ(替え難ければ待てる)
- 待つときの不快さ(立ちっぱなしはつらい)
- 生活ペース
- 予測される待ち時間は以下のような要因で決定され,この予測待ち時間が我慢できる待ち時間未満であれば,待つという判断をする.
- 列の待ち人数
- 列の消化速度
- 以前経験した待ち時間
- そのサービスで予測されるだいたいの待ち時間
- 緊急度
- 他の客の待ち時間
- 客の待ちによる不満足の決定要因としては,以下のようなものにより決まる.
- 待ちの質(時間,期待との差,快適さなど)
- サービス(質,選択肢の貧しさ,価値の無さなど)
- 客の質(緊急度,ネガティブマインド,不安,退屈さなど)
- 待ち時間の削減には,オファーの管理と需要の管理がある。前者は,余剰生産能力の維持,突発需要に対応する機器のリース,柔軟な雇用体系の労働力,客優先のマネジメント,サービスの質の低下(セルフサービスにするなど)などがある。後者は,予約システム,季節調整価格,キャンペーンなどがある。
- 客がどれくらい待つと考えるか(待たされたと,ではなく?)をperceived waiting timeといいこれも大事。待つことを告げられ,謝罪があり,不安を和らげ,スタッフがちゃんと客を気遣っていることを示すというコミュニケーションが大事。
- 遅れが発生したときは伝えるべきだが,待ち時間を過少見積りしないほうがよい。appointment syndromeといい,約束時間を過ぎると,それが少しでも不満に感じる。
- 遅れたときは,顧客メリットを伝えられると良い。例「フライトが遅れてすみません。この遅延はお客様の旅をより安全かつ快適にするためのものです」
- 不安は待ち時間を長く感じさせる。不安を減らすために,あとでサービスを中断しなければならなくてもまず開始する,予約システムを使う,可能な限り顧客を安心させる,顧客の不安を増すような行動や言動を慎む
- 事例
- 高層オフィスビルのエレベーターの待ち時間が長いという問題に対し,エレベーターのドアの横に鏡を設置。
- 空港で荷物が出てくるのが遅いというクレーム。しかし出てくる時間は平均値。問題は荷物受け取り場まで3分でつけてしまうこと。受け取り場を遠くして歩く必要があるようにしたらクレーム止まった。