「日本語の作文技術」覚え書き
自分が作文をするときだけでなく,人の文章を添削するときにも,なぜ直した方がよいのかをしっかり説明できるようになります.
普段から特に気をつけておきたい点,なかでも覚えておけばすぐに使える注意点を備忘のためにまとめておきたいと思います.
1. 修飾する側と修飾される側の言葉同士をできるだけ直結し,入れ子状態にしない.
×:僕は佐藤が鈴木が山本が告白した場所にいたと言ってたのかと思った. ○:山本が告白した場所に鈴木がいたと佐藤が言っていたのかと僕は思った.
×の例では,「山本が→告白した場所に」の外側に「鈴木が→いた」があり,その外側に「佐藤が→言っていたのかと」,さらにその外側に「僕は→思った」という入れ子状態になっており,非常に分かりにくい分になってしまっています.○の例のように入れ子状態を解消することで読みやすい文章になります.
2. 修飾の順序は節を先にし,句を後にする.
×:黄色いアップリケの縫い付けられたハンカチ ○:アップリケの縫い付けられた黄色いハンカチ
×の例では,ハンカチが黄色いのかアップリケが黄色いのかの区別がつきません.
3. 長い修飾語は前に,短い修飾語は後ろに.
×:僕の親友の鈴木に山本が僕が夢に見るほど大好きな佐藤を紹介した. ○:僕が夢に見るほど大好きな佐藤を僕の親友の鈴木に山本が紹介した.
- 僕が夢に見るほど大好きな佐藤を
- 僕の親友の鈴木に
- 山本が
と長い順にすることで読みやすくなります.ただしこれに関してはなぜ×の例が読みづらいのかについてのロジカルな解説が無く,「別に読みづらくないですけど?」と言われたときにどのように説明すればよいのだろうと思いました.
4. 修飾の順番は,大事な順に.
×:コーヒーで太ももに佐藤さんが火傷をした. ○:佐藤さんが太ももにコーヒーで火傷をした.
特殊な場合を除けば,「佐藤さんが」「太ももに」「コーヒーで」の順に大事でしょう.
5. 長い修飾語が二つ以上あるとき,その境界に点をうつ.
これ自体は当たり前のことのように思いますが,大事なのは読みやすさの向上に貢献しない不要な点をうたないことだと思います.
6. 上記の語順の原則に反する場合に点をうつ.
×:山本が僕が夢に見るほど大好きな佐藤を僕の親友の鈴木に紹介した. ○:山本が,僕が夢に見るほど大好きな佐藤を僕の親友の鈴木に紹介した.
×の例は「3. 長い修飾語は前に,短い修飾語は後ろに」に反していますが,どうしても「山本が」を主語にしたい場合そのあとに点をうつことで誤読を避けることができます.
7. 並列や同列の語の間には読点より中点(・)
作文において読点は非常に重要なため,不用意な使用を避けるために並列や同列の語の間には中点を使うことを推奨しています.ただし同列の語が例えば「トーマス・エジソン」「二コラ・テスラ」のように中点を含む場合,中点を使うことができません.このような場合,筆者は二重ハイフンを使うと言っています(例:トーマス=エジソン).
8. 過去形の使い方
過去形を使う場合,「過去の事実(今はそうではない)」なのか「筆者にとってその話を聞いたのが過去というだけ(事実は今も変わらない)」のかが分かるようにすべきと言っています.